叱れない管理職の本質について事例を通してお伝えします。
その部署では、次から次へと案件が舞い込んでくる状況でした。
しかし、部署にいるメンバーにとっては、締め切りに追われ、精度も問われ、技術力も問われるという、多大なプレッシャーの中でその案件を捌いていかなければならない環境でした。そして当然ながら残業も紐づいてくるものでした。
私の管理職としてのミッションのひとつは、このカオス的環境をどうにかすることでした。
そんな時に事件はおきました。
いつものように朝礼で、今日の案件の割り振りをしようとしていた時、部下全員に新規案件を振れるリソースは限りなくゼロに近く、みんな顔を下に向けているのでした。
そのようななかでも、何とかやってもらわねばということで、部下の中でもベテランのAさんにお願いすることになりました。
Aさんはいくつか案件を持っており、うち一つは大型案件で、その案件にAさんのほとんどのパワーを割かれている状況でしたが、引き受けてくれました。とはいえ、その表情はあまり芳しいものではありません。
その新規案件のレクチャーを営業担当がAさんにしているときに、事件は起きました。
Aさんは普段の仕事の状況からイライラが頂点に達してしまったのでしょうか、ビジネスパーソンとしては好ましくない発言を営業担当にしてしまいました。
当然、営業担当も怒ります。
そして、その場はなんとか収まるのですが、営業担当はまず私の所へ来て、「こういうことがあった。ああいう言い方はちょっと無いと思う。何とかしてほしい」という旨のメッセージを私に伝えます。
営業担当の話を聴く分には、Aさんに非があるように聞こえましたが、Aさんからも話しを聴かなければなりません。
まずは、営業担当に状況は分かった、Aさんと話しをする、と伝えます。
話し合いスペースへAさんを呼んで、新規案件のことで話しを聴きたいと伝えたところ、Aさんは「あの話しか、、、」と気づいたような顔をします。
「Aさんからも、話しを聴きたいです。」
と伝えたところ、
「ああ、いいんです。自分が悪かったんです。言い方が悪かったです。すみません。以後気を付けます。」
一気に吐き出すように伝えてきました。
その表情はバツの悪い顔というか、なんで自分ばっかりというか、ふてくされてしまっているというか、どうして分かってくれないんだ、というような表情に見えました。
この表情を、私は管理職として見逃してはいけなかったのです。
Aさんにピシャッと言われてしまい、私は二の句が出ませんでした。
もう少しAさんからの話しを聴きたかったのですが、Aさんは目を合わせてもくれず、心のシャッターが下ろされたのを感じました。
私は、それ以上深掘りができませんでした。Aさんのシャッターが下りたことで、私は叱ることができませんでした。「もういいや」と匙を投げてしまったんですね。
ただ、Aさんが発したことばは事実だったため、そこは「叱るべき」事案だったのです。にも関わらず叱らず、叱れずにその場を終えました。
その時気になった「表情」について、私はもっとAさんに食い下がらなければいけなかったのに、私は「ことなかれ主義」を優先しました。
営業担当にそれらを伝えると、案の定「そういう感じですか・・・」と半ばあきれたような反応でした。
この時の私の内心は、
(営業担当は)ちゃんと叱ってくれよ、マネージャーさん。
(Aさんは)なんで自分の味方でいてくれないんだ、このマネージャーは。
と、私に対して二人とも思っているんだろうなと、
私というマネージャーのふがいなさに辟易しているんだろうな、と自己嫌悪でいっぱいでした。
この出来事はもう10年以上前になるのに、どうしてこんなにモヤモヤして私の頭にこびりついているのか考えました。
フォローすべき営業担当やAさんに対して、私はまったくベクトルを向けていませんでした。
「叱らないといけないけれど、叱れない、言いにくい、どうしよう。叱らない方向へ話しを持っていけないかな」
そんな自分のことしか考えていませんでした。自分にしかベクトルを向けていませんでした。苦手なことには向き合いたくなかったのです。
営業担当がどんな気持ちだったのか、Aさんがどんな気持ちだったのか、彼らの気持ちをどうすれば解消する関わりができたのか、二人にまったくベクトルが向いていませんでした。
そもそも「叱る」とか「叱れない」とかという次元のことではないのに、そこばかりに目がいっていました。
管理職、叱らねばならない。
こんな固定観念が私の中にありました。
二人に謝りたかった、というのが本音です。
ものごとの本質を見極めず、自分の「ことなかれ主義」のために、二人をモヤモヤさせてしまった事例でした。
何かの拍子に、今後もこの事例を思い出すことになりますが、私にとっては大切な大切な教訓です。
ものごとの本質を見極めるために、その時のその人の表情を見て、直感で感じたこと、それを実行する。これが私にとっては全てです。
それをないがしろにしては、決して、いけないです。
★「叱り方」は後に学び、新しいコミュニケーションスタイルとして幅が広がりました。
社名
所在地
TEL/FAX
設立
代表取締役
株式会社シールズ
〒108-0022 東京都港区海岸3-19-2
マリンシティダイヤモンドパレス716号室
03-3454-4339
2007年3月
澤田玲奈
事業内容
・人財開発コンサルティング事業
・不動産コンサルティング事業
・クラウドソリューション開発事業